ローマ皇帝アウグストゥスの住民登録の勅令は、人頭税を徴収することが目的だったと言われています。人々は故郷の町へと旅をするためにてんやわんやの大騒ぎ。貧しい民は更に搾り取られ、ユダヤでは反乱の気運も高まっていきました。
そんな混沌とした世情の裏側で、ひっそりと生まれたのがイエスさまでした。自分の故郷において身重の妻を連れたヨセフに泊まる場所がないというのは不思議なことです。それほどベツレヘムの町も混乱していたのか、あるいはマリアの懐妊にまつわるおかしな噂話が出回っていたのか。ともかく、両親の他に立ち会う者もなく、イエスさまは世に来られたのです。
由木康は「Silent night Holy night」を「きよしこの夜、星はひかり」と訳しました。対応しているのは「Silent」と「星はひかり」の部分なのではないでしょうか。星のひかる音さえ聞こえてきそうな静けさの中に御子は生まれたのです。
人々は自分のことで夢中になって、空の星など見向きもしない。その小さな星のもとに生まれたばかりのか弱い命などは更に誰の目にもとまらないことでしょう。しかし、神さまの目はそこに注がれているのです。「聖なる」とは神さまのために特別に切り取られたものを意味します。2024年、いろいろなことに心を奪われてきたわたしたちでした。このクリスマスの日、わたしたちは心の深いところに与えられた聖なる静けさに耳を澄ませることができたらと願うのです。
Comments