パウロは数々の手紙を書きましたが、その宛先の教会の多くは分裂の危機にさらされていました。初期の教会はまだ確たる神学もなく、教理も定まっていなかったからです。そのため、パウロの手紙には、教理を整えたいという思いと共に、これらの教会に向けた和解のメッセージが込められていたのでしょう。
12節に「互いに持っている信仰によって励まし合いたい」とパウロは言います。これは、パウロが自分の信じ方が絶対ではないと自覚し、自分とは違う相手の信仰の姿勢を通してパウロもまた励ましを得たいと願っているということなのではないでしょうか。考え方の違いから、相手を自分の考えに染めようとする行為はかえって分裂を生みます。パウロは手紙によって自分の考えを述べますが、相手がどのような反応をするのかということにも関心を失っていないのでしょう。だからこそ、パウロはローマを訪問して、顔と顔を合わせて話しをしたいと考えているのではないでしょうか。
皆が同じ信仰でひとつになっているのであるとすれば、それが揺らぐとき、倒れるとき、すべてが台無しになってしまいます。わたしたちは互いに違う信仰によって立っているからこそ、励まし合い、支え合うこともできるのです。パウロは、危機的状況にあるエルサレム教会を支えて欲しいと各地の教会に呼びかけるために旅に出ました。この危機の時代、わたしたちもそれぞれの信仰で互いを支え合うことができたらと願うのです。
Comments