説教要約 マタイ16:1-12 2022.7.10
「膨らむ希望」 井上創牧師
生地にパン種を混ぜるとやがて生地は膨らみます。イエスさまはファリサイ派やサドカイ派の教えのことをこの「パン種」に例えて語られました。当時、ローマ帝国や、ユダヤの王政に対して民衆は不満を募らせていました。世相は明るいものではなく、誰もが不安を抱えていたのです。このような人々を相手に語られるファリサイ派やサドカイ派の教えは、決して心を安らかにするものでなく、むしろ神さまの裁きによって不安を煽り、互いのことを裁き合うような殺伐とした教えだったのです。人々の心は恐れと疑いではち切れそうに膨らんでいました。
この不安を解消するために、人々は「しるし」を欲しがりました。自分は救われているという証拠を目にしたいと願ったのです。しかし、イエスさまは「しるし」としての奇跡を拒否します。目に見える「しるし」は、その場限りの刹那的なものであると知っておられたからでしょう。与えられるのは「ヨナのしるし」。これはヨナが魚のお腹の中で三日を過ごし新しい者へと変えられたように、十字架と復活を意味しているのでしょう。
十字架は、イエスさまが全ての奇跡を捨て去り、ただ神さまだけを見上げて死に向かわれた、その従順をあらわしています。あらゆる奇跡が潰えたように思えるわたしたちの現実に神さまが伴っていてくださる。不安に満ちた時代に送られた「しるし」であるこの十字架のメッセージを信じるとき、籠に溢れたパンのようにわたしたちの心は希望で満たされいくのです。
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