説教要約 使徒7:54-60 2020.6.21
「霊を返す」 井上創牧師
十字架のイエスさまの最後の言葉の一つは、
「父よ、彼らをお赦しください。自分がなにをしているか知らないのです」でした。
ステファノの最後の言葉も同じように他者への執り成しです。
悪意を投げる人に、善意を返す。頬をはたかれて、もう一方の頬をも出す。
これが、悪意によって人に向かおうとする者にとって、
やがてどれほどの意味を持ってくるのか。
それは、パウロという一人の人物を通して明らかになってきます。
これは、ステファノが高潔な人物だからそうできたわけではないでしょう。
ステファノは恐れの中でこう叫ぶのです。
「主イエスよ、わたしの霊をお受けください」。
これは、わたしをコントロールするエネルギーをその手に渡します。
わたしという肉体の操縦席を明け渡します。
命が尽きるこの最後の時間を、あなたのために使いますということです。
そうしたら、ステファノは言えたのです。
こわばっていた心が、溶かされて。
「主よ、この罪を彼らに負わせないでください」と。
怖い、辛い、寂しい。
そういう思いに支配されているときこそ、
わたしたちは自分の思いを抱きしめて、閉じ込めて、守って、
誰にも渡さないようにと頑なになる。
そのとき、言えたらと思うのです。
「わたしの霊を、神さま、あなたにお返しします」。
すると、握りしめた氷のような心が、少しずつ溶かされて、
指の間からしたたる水が、やがて誰かの心をも潤していくのです。
辛いときだからこそ、そう言えますように。
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